立命館大学では、2019年12月14日と15日の両日「おしろをつくろう」のイベントが開催されました。
このホームページは立命館大学より要望を受けてそのイベントで使用する「彦根城の型紙」を作成、
その活動を開発ストーリーとしてまとめました。お楽しみください。
※立命館大学のイベント団体「Threex」窓口はこちら ⇨ https://note.mu/threex3/n/n15adbacd3933
[作成の取っ掛かり]
関西の歴史ある有名大学「立命館大学」の女生徒さんから私のホームページへメールが入りました。
まだ暑さが残る夏の日であった。その内容は、
※「Threex と言う小学生向けのイベントを企画する団体を立ち上げました。
小学生にお城模型を作成してもらい、攻め難いお城等を考えてもらい歴史に興味を持ってもらうのが目的です。
そこで彦根城の模型型紙100個を作ってもらいたい」との事でした。
↑彦根城…本物です。
型紙作成は、お城模型を個別に作成するより何倍もの苦労と時間が掛かります。
有償でのお話しでしたがお断りする気持ちでメールを読み返してみると、
女学生さんの強い志を叶えてあげたい気持ちとそれよりも「簡略式な模型」なら出来そうだと感じ始めました。
勿論、無償支給でその他、下心もありません。
そして、写真は現在作成中の模型の外観容姿ですが、何故、真っ白なのか? それは又、別の機会に説明します。
↑簡略彦根城(完成外観)
[試作への考察]
私のお城模型の基本組み立ては、初めに壁から組み立てます。(左の写真の様に)
そして屋根や出窓(破風)などを組み付けていきます。
型紙枚数がA4サイズで7枚で、作成時間は最低でも15時間かかります。けれども、
今回は幼児向けの簡単な彦根城です。なので、A4サイズの2枚でまとめたいものです。
↑ 私の模型は壁の組み立てから始めます。こんな感じです。
今回、簡略のヒントになったのは、壁と出窓を垂直一面で同一化です。但し、
出窓の一部を省略してもイメージが残せるか? そして、容易に作成出来るか?です。
それは、実際に切り貼りで試作品を作成して確認する方法しかありません。
そこで、コピー用紙にフリーハンドで図柄を仮サイズで描き、切り抜いて組み立ててみました。(左の写真)
その写真を立命館大学に送信、承諾を得ることが出来ました。
↑試しの切り張り作品 ・・・ 承諾が貰えたと言うよりも、私が約束通りに実行していることが分かって安心された様子でした。
[一階壁の清書]
外観イメージでお互いの意思が統一できたので、まずは一階部分の製図です。
それが左の絵柄です。
今の段階ではイベント開催前なので、図面全体をお見せするのはできません。
ご容赦ください。
組み立てると次の様になります。
従来は壁を積み上げていたので上の階を乗せる底板(天井)がありましたが、
今回の作品は、壁+三角出窓を合成するので底板がありません。
そこで今回は、
左写真の様に出窓の間から支点(枝を伸ばす)を作って中央部で広いスペースを確保しました。
[一階の屋根]
左が一階の屋根パーツです。
だけど、幼児用の組み立てとしては〝貼り合わせが難しい〟です。
※貼り合わせ要領は下記の写真付きで説明します。
写真は屋根を取り付けた後の写真です。
屋根パーツを大きい方の出窓で支え、そして写真右の中央部にはのりしろを作るスペースが無いので双方に
凸凹部を設けて絡ませ固定する方法にしました。
-貼り合わせの要領-
・ 側に接着剤を付けます。
・そして、指で押さえつけて乾くのを待ちます。
接着剤の量にも寄りますが、2~3分で乾きます。
[二階の壁]の作成
今回のイベントは、お城模型を作るのが最終目的ではなくて
子供さん達に歴史に興味を持ってもらうための時間(ミーティング)が必要です。
そのためには、模型作りを簡単にする必要があります。
それを考慮して、今回の壁は直接に印刷する方法を採用することにしました。
ここで模型全体を確認してみます。
左の写真です。
やっぱり、三角出窓に寂しい感じはあるが、まずはこんなものだと思います。
さて、次は三階の壁を作ります。
[壁の三階]の作成・・・何故白いお城なのか?、理由を説明します。
三階の壁の作成です。横線を数本描いているのは手すり、そして楕円は窓です。
ご覧の様に何故、白っぽいお城にしているのかを説明します。
型紙開発の依頼者様「立命館大学・生命科学部応用科学科」の希望は、
幼児達が白いお城に自由な色を付ける〝塗り絵タイプ〟のお城です。
それは、初めは透明ですが、紫外線が当たると色彩が出てくる趣向です〟面白そうです。
三階壁を乗せた外観を写真で確認します。こんな感じです。
白い塗り絵のお城ですか?
私の気持ちは、お城の壁は白色、瓦はグレーかブルー(青銅)色か、赤瓦(耐寒用)の固定観念がありますが、
現代っ子がどんなお城をイメージするのか? もしかして石垣も蛍光色あり、ですか?
[二階の屋根]の作成
屋根を作る場合、私のお城は角に反りを取り入れたいので普段の型紙は一辺ずつ4枚のパーツを貼り合わせます。
今回は4枚を繋ぎ合わせて簡略化したパーツにしました。
左の型紙はいびつな形をしていますが、織って貼り合わせると正四角形になります。
いびつな形を正四角形にした屋根をお城本体にはめ込みます。
自信を持って正四角形になる予定でしたが、本体に組み込むと安定性が悪い事が分かりました。
ここは内側に支え部分を追加で設けて改善することにします。
[天守の屋根]の作成
天守の屋根とシャチホコの組み立てを説明します。※写真は都合で名古屋城の写真を利用しています。組み立て要領は同じです。
型紙の屋根を切り抜いて、左写真の様に折り曲げます。
三角窓を切り抜いて、側に接着剤を塗ります。
暫くの間、指で支えたり、押さえつけるなどして乾くまで固定する。
屋根パーツ(側面)を取り付ける。
屋根パーツを取り付けると、この様になります。
シャチホコを切り抜いて、折りたたむ。
シャチを屋根に取り付けて、屋根完成です。
[天守屋根]の取り付け
本体に取り付けるとこんな感じになります。
唐破風などの装飾としているパーツを張り付ける。
[石垣]の組み立て
石垣を組み立てます。
[完成] と 反省
石垣と本体を貼り合わせて完成です。
ここで、改めて彦根城の写真と比較してみると面長な外観になってしまいました。
これは、初めに正面写真と側面写真からサイズを測らなかったからです。
簡略化ばかりを念頭においていた事もあったが、手元に正面側面の写真が無かったのも事実です。
簡単に考え過ぎた事を反省しています。
[もう一つの問題点]
そして、もう一つ問題点があります。作成時間が予想以上に長くなった事です。
研修・勉強会のなかのお城模型作成なので一時間以内で完成させられるのが理想です。
私が作成しても約一時間もかかりました。(私の他の作品は最低でも15時間が必要です)
この作品でこれ以上の簡略化は不可能です。そこで、立命館大学からの提案がありました。
立命館大学の改善案 ⇨ 時間がかかるのは「切り抜き作業」と判断、それを解消する方法は「ミシン目」の採用でした。
みんなで実行されるとのことでした。大変ですがよろしくお願いします。
※お城の様な外観の複雑な建物の組み立てを簡単にするのはこれからの課題ですね。
自分としてはそれなりに実行してきた結果、満足とは行きませんでしたが約束を果たしたかなと思っています。
あとは依頼者様に満足して頂けるかどうかです。
これから、真っ白な塗り絵仕様のお城模型に色付けをします。どんな結果になるか自分も楽しみです。
[ 色付けの開始]・・・色付けの例
一階の屋根
⇩
色付けした屋根
三階の壁
⇩
色付けした壁
色付け完了の屋根三階
色付け完了の最上階の天守屋根
色付け完了の石垣
※塗り絵仕様なので石垣は敢えて色を付けない方が良いかと迷ったが、
ここでは色付けを実行。もっと薄い色が良かったとも思います。
次からは、実際に組み立ててみたいと思います。
[色付け版で組み立て]を開始します。
一階の壁を組み立てます。
一階の屋根を張り付けます。
※屋根の色、あまり変化がないね。
二階の壁を組み付けます。
※残念なことに屋根のグレーが見えにくいですね。
三階の壁を組み付けます。
※手すりはキッチリ現れています。
二階の屋根を組み付けます。
最上階の天守屋根を取り付けます。
※天守屋根は個別に作成します。ここでは説明を省略しています。
唐破風や三角出窓の装飾を施します。
石垣を組み立てます。
※この石垣の岩色はかなり濃い過ぎる感じがします。
石垣と本体とを組み合わせて「完成」です。
※屋根色が薄く、石垣色が濃いでしょうか?
薄い色が良いかも知れないですが、反面、白色石垣だと安定性に欠くかもしれないです。
まずは、子供さんたちがどんな色合いに仕上げてくれるのか、楽しみです。
立命館大学のイベント「お城をつくろう」は大盛況、その状況を写真で紹介します。(写真は4枚でスライダーします)
[立命館大学から〝 経過報告とお礼 〟]メールが届きました。(下記、原文のまま抜粋)・・・
二日間のお城をつくろうが終わりました。
準備は大変なことが多かったですが、小学生たちが喜んでくれて本当に良かったです。
お城作りも、親御さんが手伝ってくれたり、ミシン目を入れたことが役立ち、時間内にみんな作り上げる
ことができました。
塚原さんのご協力なしではこのイベントを成功させることはできなかったなあとしみじみ感じております。
無理なお願いでしたが、本当にありがとうございました。 メンバー一同感謝しております。
[あとがき]
夏の暑い頃に型紙作成の依頼を受けて何とか志しを叶えてあげたいと引き受けました。しかし、模型を簡略して作成するのは予想より
課題が多くて断ろうかと思いましたが粘り強く継続、まずはイベントに間に合わせることが出来ました。
従来、お城模型の作成依頼はあっても、まさか型紙の依頼が来るとは思っていなくて驚きましたが、何とかお役にたてた様で一安心です。
作品には多くの反省点がありますが、そんな箇所はこれからの作品作りに役立てて行きたいと考えております。
この経験が出来たのは立命館大学の皆様のおかげです。有難うございました。そして、最後まで読んで頂いた皆様にもお礼申し上げます。
2019年12月21日